コンデジで変光星観測 4

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(2)測光する (a)一次処理

撮影した画像をPCに取り込んで測光用のソフトウェアで星の明るさを測ります。星の明るさを測る前に撮影した画像を測光ができるように処理しておかないといけません。この処理のことを一次処理といいます。ここではRAWデータ形式で保存された画像を用いることにします。

星の明るさを測るといってもいったい何を測るのでしょう。そう、画像に写っている星が何等星であるかを測りたいのです。では何等星というのはどういう意味なのでしょうか。例えばAさんがある星を見てX星よりY星の方が明るく見えたとします。でもBさんはX星の方がY星より明るく見えると主張しました。AさんとBさんのうちどちらかが嘘をついているのでしょうか?もちろんどちらかが嘘をついている可能性は排除できませんが、どちらも正しいという場合もあります。例えば、AさんとBさんの色の感受性(感度)が異なっていたとしましょう。Aさんは赤の方が青より明るく見える眼を持っていて、Bさんは逆に青の方が赤よりも感度が高い眼を持っているとしましょう。X星は青い星でY星が赤い星だったとしたらAさんもBさんも素直にそう見えたといっているだけで二人とも嘘はついていないということもあるのです。AさんとBさんをカメラに置き換えて考えてみてください。2台のカメラでそれぞれ写した画像を使って測光したら全然違う値が測れてしまったら困りますよね。それを調整するための前処理も一次処理の中に入っています。

星の等級を決めるために1950年代にジョンソンさんという天文学者が波長帯(色)別に星の明るさを決めました。そのときにU(紫外線域)、B(青色域)、V(実視域 Visual)のフィルターを用いて測光標準星を決めました。その時に使ったフィルターと同じ特性をもったフィルターをジョンソンフィルターといいます。その後カズンズさんがRc(赤色域)、Ic(近赤外域)のフィルターを用いて波長の長い光の等級を決めました。これらのフィルターを用いて測光するシステムをジョンソン・カズンズシステムといいます。ただしジョンソン・カズンズのフィルターは測光用以外に使い道が無くて数が出ないためでしょうがとても高価です。フィルターだけで1セット10万円から数十万円もします。これではお手軽観測とはいえません。

ジョンソン・カズンズシステムのフィルターはその特性をきっちりあわせて作る必要がありますが、世界の天文台ではその目的に応じてジョンソン・カズンズとは特性が違うフィルターを使用していることが多々あります。それでも最終的にはジョンソン・カズンズシステムで測光した値に換算できるように換算式をもっています。このあたりの詳細は東北大学にいらっしゃった市川さんのこの記事を参考に勉強してみるのがよいでしょう。

話が少しそれましたが、変光星を測光して明るさを決めるときにはジョンソン・カズンズのVフィルターで測光した等級(V等級)やBフィルターで測光したB等級などとジョンソン・カズンズシステムで測光したとしたらこの等級になるよという値を求めなければなりません。そこでどうするかというとコンデジの撮像素子(CMOSなどと呼ばれます)は光の3原色に相当する画素が規則正しく配置されていることを使います。撮像素子は緑と赤と青に感じる素子がベイヤー配列と呼ばれる配置で並んでいます。ですから撮影した画像の中から各色に相当するデータごとに分けてあげ、その内緑の素子が写したデータだけを使うことにします(このデータをGプレーンのデータといいます)。そうすればVフィルターをつけて撮影した画像に近いデータが得られることが分かっています。すなわちGプレーンのデータを使って測光すればV等級が測れると思ってください。(もう少し詳しく言うとGプレーンのデータはV等級ではなくVt等級と相性が良いようです。Vt等級とはヒッパルコスという測光衛星が使っていたフィルター特性から決められた等級です。)

では最初に撮影した画像のRAWデータからGプレーンを取り出してみましょう。取り出すには星空公団さんが作成・配布してくれているraw2fits.exeというソフトを使用します。このページにあるraw2fits.exeをダウンロードしてどこかに保管して置いてください。使い方は簡単でWindowsのエクスプローラーから変換したい画像ファイルをドラッグしてraw2fits.exeにドロップするだけです。そうすると画像ファイルがあった場所に各プレーンに分けられたデータがファイルとして生成されます。CANONのカメラのRAWデータはCR2(最近のものはCR3だったりします)という拡張子が付けられています。例えばxxx.cr2というファイルをraw2fits.exeにドロップするとxxx.cr2.b.fits とかxxx.cr2.g1.fitsとかいうファイルができます。この内、xxx.cr2.g.fitsというデータファイルを使って測光します。実はベイヤー配列の撮像素子には緑を感じる画素が赤や青に感じる画素数の2倍あります。それぞれを取り出したxxx.cr2.g1.fitsと xxx.cr2.g2.fitsというファイルも出来ますが、g1とg2を加算したファイル(xxx.cr2.g.fits)でいいでしょう。(g1,g2,gをそれぞれ測光してみましたが大きな違いはありませんでしたので)ただし、raw2fits.exeが全てのカメラのRAW画像を扱えるわけではないようですし、このソフトはWindowsでしか動きません。Linuxなどの非Windows PCを使っている場合やraw2fits.exeがサポートしていないカメラの場合は別の方法を考えなければなりません。

raw2fits.exeが生成したファイルの拡張子がfitsとなっていますが、これはfits形式のファイルであることを表しています。fits形式というのは天文関連の研究機関で共通に使われるデータ形式のことです。一般的にはあまり知名度の無い形式ですが、天文界隈では世界標準の形式です。

取り出したGプレーンの画像を使って測光をするのですが、その前にもう少し前処理をしなくてはいけません。それはダーク補正とフラット補正です。ダーク補正というのはカメラのレンズをふさいで撮影した真っ黒なデータです。デジタルカメラは数百万、数千万の画素がありますのでそのうちのいくつかはちゃんと機能していなかったり、温度が高いと暗電流ノイズというノイズ(雑音)が写ったりします。ですから星を撮影したのと同じ条件(感度、露出時間、温度の条件を揃える)でダーク画像を撮影しておきます。そして星の画像からダーク画像を引き算してあげることでノイズなどを消してあげる作業をします。

今回使用しているG5Xというカメラは長秒時ノイズ低減という機能があり、それはある程度長い露出を行なうと、撮影した直後に同じ露出時間だけダーク画像を撮影して自動的に引き算してくれる機能です。私はこの機能を使っているのでダーク演算はしていません。

フラット画像とは画像を平坦にするものです。どういうことかというとカメラを真っ白なものに向けて撮影すると下のような画像が得られます。本来真っ白な画像になるはずですが、周辺が暗くなっていますね。これを周辺減光と呼びます。カメラのレンズは有限の大きさを持っていますから周辺部に入ってくる光は中心部に入ってくる光より弱くなります。ですから周辺に写っている星は中心に写っている星より暗く写ってしまうことになります。これでは写る位置によって測光した値が変わってしまうのです。ですからフラット画像のデータで星の画像データを割ってあげて全面に均一に光が入ったように補正してあげるわけです。この処理をフラット補正といいます。

今回の場合は、Gプレーンの取り出し、ダーク補正、フラット補正をまとめて一次処理と呼んでいます。モノクロカメラにジョンソン・カズンズシステムのフィルターを使用して撮影された画像に対してはGプレーンの取り出しは不要ですので、その場合はダーク補正、フラット補正をすることを一次処理といいます。

一般にはダーク補正、フラット補正はソフトウェアを用いて行ないます。今回使用するステライメージというソフトは一次処理を行なうことができます。もちろん他にもいろいろなソフトで一次処理を行なうことができます。国立天文台で無償で配布しているマカリというソフトを用いてもダーク補正、フラット補正が出来ますのでこれもお勧めです。

コンデジで変光星観測 3

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(1)写真を撮る

カメラを三脚につけて目的の変光星を撮影します。目的の星がどこにあるかは星図と見比べて決めます。PCやスマホのステラナビゲーターやスマホのSkySafari等のプラネタリウムソフトを使って調べてもいいですし、日本変光制研究会のページで変光星図を公開してくれていますのでそれを使ってもいいでしょう。AAVSOのサイトでは変光星を指定するとその場で星図を出力してくれるページがありますのでそれを利用するのもいいと思います。

カメラは露出を20秒以上に設定します。これは星の瞬き(シンチレーションといいます)によって星が明るく見えたり暗く見えたりする影響を排除するためです。ある程度長く露出することによって星の明るさの見え方を平均化するのです。ただ、露出を長くすればするほど良いかというとそうでもありません。固定撮影ですから露出を延ばすと星が線になって写ります。その線があまり長くなると測定がしにくくなるのです。星の明るさを測るときには星を点に写す必要はなく、ある程度線状に写ったほうが好都合なのですが、あまり長すぎると後で大変になるということです。

絞りは開放(F値が一番小さい状態)か一段絞ったくらいでいいでしょう。あまり絞りを絞ると星が写らなくなってしまうので。絞りを絞ると星の形(星像)がよくなりますが明るさを測定するときにはあまり星像をよくすることを考えなくてもいいです。正確に測定するためには星の光をたくさんの画素に分散させたほうがよいのでピントを少し甘くして(いわゆるピンボケにして)撮影するくらいですから。

ISO感度はちょうどいい値を試行錯誤で決めます。前述のように露出はある程度長くしなければならないので、住宅地など空が明るいところでは露出オーバーになってしまうこともあります。露出オーバーになってしまう場合は感度を下げてちょうどいいところを探ります。目的の星がちゃんと測定できる程度に写っていることを確かめながら感度をいろいろと変えてみて決定してください。

以上まとめますと、カメラを固定して露出時間、絞り、感度を設定して撮影する、ということです。そのためにはマニュアルモードがあるカメラが望ましいことになります。オートの設定では撮影の度に撮影条件が変わってしまいますので定量的な測光データが得られにくくなります。

下の写真はCanonのPowerShot G5Xというコンパクトデジタルカメラを使ってくじら座のミラを写した画像です。焦点距離9mm(35mm換算で24mm)、露出20秒、絞りF2.8、ISO400での固定撮影です。LEDの街灯が煌々と照らす住宅街でも写真に撮ると肉眼で見えるより多くの星が写ります。ミラは2等星から10等星まで変光する変光星ですが、今は3等星くらいで肉眼でも見えるくらい明るくなっています。ここではこのミラを測光してみることにします。

コンデジで変光星観測 2

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全体の流れ

コンデジで変光星の観測をする流れを書いてみます。こんなことやるんだというイメージを持ってもらえればいいのですが。その後それぞれの作業について解説していこうとおもいます。

(1)まず写真を撮ります。カメラを三脚につけて目的の星を視野内に入れてシャッターを押すだけです。三脚は多少華奢なものでも大丈夫です。カメラの時計を正確に合わせておいてください。露出は20~30秒くらいです。絞りはなるべく開けて下さい。ISO感度は適当(後で詳しく書きます)でいいでしょう。

(2)撮影した写真をPCに保存します。その写真を一次処理という前処理をしてから星の明るさを測定します。一次処理や測定に使うソフトウェアはいろいろなものがあります。私も数多くのソフトを使ったことがあるわけではないので、ここでは無料で入手できるものとステライメージという天体写真の画像処理を行なう有償ソフトでの処理をして見ます。ステライメージは体験版があるのでそれで試してみるのもいいでしょう。

(3)測定結果が得られたらグラフを書いてみることをお勧めします。変光星は数日~数年という間隔で変光しますからグラフに描いてみるとその星がどんな風に明るさを変えているのかが実感できます。世界中の変光星観測者のデータが集まってくるAAVSO(American Association of Variable Star observers)という組織があるのですが、そこのページで変光星のグラフを見ることが出来ます。そのグラフと自分の観測結果を比べれば自分の観測の妥当性も分かるでしょうし、慣れてきたらAAVSOに測定結果を投稿するのも楽しそうです。

コンデジで変光星観測 1

コンデジで変光星観測 2」→

変光星を観測してみたいということで第一弾として「コンデジで変光星観測」をしてみたいと思います。最初にお断りしておきますが、私は変光星観測はど素人です。変光星を観測してみたいので今からはじめてみる素人の記録として見てくださいね。これからの試行錯誤を記していきますのでいろいろ間違っているかもしれません。識者の方からの御指導度鞭撻お待ちしていますm(_ _)m

まず、なぜコンデジなのかですが、観測を始めるにあたり敷居が低そうなので選びました。コンデジですと比較的持っている人も多いでしょうから新たに機材を揃える必要も無いし、気軽に出して観測してさっとしまえるのではないかというものぐさな人向きだろうと考えたからです。

目論見としては以下のような運用を考えています。

  • コンデジを三脚にセットする
  • 固定撮影で目的の星を撮る
  • PCで撮影画像から測光する
  • まとめる

これならば気軽に続けられるのではないかと考えたからです。帰宅が遅くなったとき、予定外の飲み会が入ったとき、曇っていたのに一瞬晴れたとき等でも大丈夫です。観測場所としては主に自宅の玄関先を考えています。3等星が見えるか見えないかの環境の上、最近LEDのギラギラした街灯をつけられてしまって全く星を見るような環境ではないのですが、この環境で続けられる方法ならできるという人も多いだろうと考えてのことです。

使用するカメラは手持ちの CANON PowerShot G5X という機種です。これと三脚だけが観測機器ということになります。このカメラはRAWデータで撮影できる機種です。最近はRAWデータで撮影できる機種も増えていますからお持ちの方も多いのではないでしょうか。もちろんデジタル一眼レフやミラーレスカメラでもOKです(OKというよりそちらのは好ましいでしょう)。JPEG画像しか撮影できない機種でもある程度の観測はできますのでJPEGカメラのみをお持ちの方はそれで始めてもいいと思います。さすがにスマートフォンのカメラでは難しいかもしれません。もちろん技術が進歩すればスマホのカメラで変光星観測も夢ではないと思いますが、現在のスマホカメラの画像で観測するにはより高い知識と技術が必要になってしまうのでここでは言及しません。

ちなみにJPEGとRAWとはカメラで写した画像をメモリーカードに保存するときの形式のことです。JPEGは Joint Photographic Experts Group という組織が決めた形式で現在ほとんどのデジタルカメラはこの規格に準拠しています。ただ、この規格はダイナミックレンジが8bitしかありません。真っ暗な部分と一番明るい部分の間を8bit(256段階)に分けて記録しますから一つの画素だけに注目すれば精度は1/256しかないということです。一方RAW形式はカメラメーカー毎の独自規格ですがダイナミックレンジが12bitから13bit程度あるようです。すなわち前述の精度的には1/4096から1/8192くらいとれることになります。ですので観測するにはこちらの形式の方が有利になります。それ以外にもJPEGとRAWの違いはいろいろあるのですがRAW形式で画像を保存できるカメラをお持ちの方は是非RAWで撮影してください。

ミラが明るいですね

ミラをご存知でしょうか。くじら座にある変光星です。2等星から10等星まで330日程度の周期で変光するので明るいときは肉眼でよく見えますが、暗くなると小口径の望遠鏡でも見つけ難いほどになります。

今ミラが明るくなっています。11月中旬頃に明るさのピークを迎えると予想されていましたが10月の下旬にピークを迎えて今はだんだん減光を始めているようです。

変光星って面白いですよね。でも、夜空の恒星は多少なりとも変光しているんです。例えば太陽を考えてみましょう。太陽には黒点が現れたり、フレア等の爆発が起こったりしています。遠くから太陽をひとつの恒星として観測していたら黒点が出たときには暗くなり、爆発が起こったときは明るくなるでしょう。ですから恒星は全部変光星だと言っても間違いではないでしょう。ただ、黒点が出たときの減光の度合いはとても小さなものです。観測できないような小さな変化しかない星はいわゆる変光星とは呼びません。変光星というのは観測できるほど明るさが変化する星のことを指していると思ってください。

変光星というのはその変光するメカニズムによっていろいろなタイプに分類されています。ミラは脈動変光星というものです。このタイプの星は寿命が終盤にさしかかって中心部での水素やヘリウムの核融合が終わりに近づいた星です。中心部分で水素やヘリウムを燃やしつくしてしまったのでその周辺で水素やヘリウムの核融合が起こります。これを殻燃焼というのですが、水素が核融合によってヘリウムになり、ヘリウムが増えることでヘリウム殻フラッシュという爆発的燃焼が定期的に起きます。これがミラ型変光星の変光のメカニズムです。変光星は他にもたくさんの種類があります。複数の星が互いに周っている連星系でおきる食変光星もたくさんあります。ペルセウス座のアルゴルが有名です。地球から見ると連星を作っている星が互いを隠しあう(これを食といいます)ために明るさが変化して見えるのです。

夜空の星が変光しているなんてあまり気にしませんよね。でも知ってしまうとどのくらい変光しているのだろう、今はどんな段階なのかなと気になりませんか。私は気になってしまいました。そうなると変光星を観測してみたくなります。私はものぐさなので手軽に観測できる方法はないかと探してみました。もちろん高価な観測機器を揃えれば観測は出来るのですが、だれでも気軽に観測できる方法を試してみたくなりました。そうすればいろいろな人が気軽に観測できるので「変光星っておもしろいよね」という人が増えてくれるのではないかと思ったのです。

とうわけでこれから何回かに分けて「お気楽変光星観測」について書いていこうと思います。