2019年5月25日
友人と山の上の駐車場で星を見ていた。
友人が来たの空を指差して「あれはなんだ!」と叫んだ。
振り返るとそこには巨大な流星痕があった。
凄い大火球を見損ねてしまったのかと思ったが、あれほどの流星痕を残す大火球であれば背を向けていても周囲が明るくなってもおかしくないのにと思って双眼鏡を向けた。
視野の中に飛び込んできたのは明るい光が1列に移動していく姿だった。
すぐに前日に打ち上げられたスターリンク衛星だと分かった。
あんなにも明るい衛星が60個も列をつくって飛んでいる様子は異様としか言いようがない。
スターリンク衛星は数年内に12000個もの同様の衛星を打ち上げて全天を覆うように配置しネットワーク通信を行うと発表していたのだ。
あのようなおぞましい光景を見たのは初めての経験かもしれない。
星を見る楽しみは夜空に輝く星たちを眺めて楽しむ、写真を撮って楽しむ、観測して楽しむといろいろな楽しみ方がある。
星を楽しむ人が増えると天文学という基礎研究への理解が深まったり、夜空を明るく照らすエネルギーの無駄遣いである光害を考える人もふえるだろう。
近年はデジタルカメラの普及、高性能化によって昔は一部の人が大変な努力をして撮影していた天体写真が気軽に楽しめるようになってきた。
天体写真を楽しむ人たちは天文ファンの中でも大きな比率を占めてきたし、新たに天文ファンになるための動機としても大きな魅力を秘めている。
その天体写真に大打撃を与えかねないのがスターリンク衛星群である。
山から下りてネットを見ていると、スターリンク衛星のことを呟いている人たちがいた。
中には「銀河鉄道みたいできれい」とか「光の列がかっこいい」との意見も散見されたが、あんなものばら撒かれたら大変だという天文ファンの悲痛な叫びが徐々に増えてきていた。
今でも日没後や夜明け前にはかなりの数の人工衛星が飛んでいるのが見える。
だが、人工衛星の大半はとても暗いものでたまにしか通らないので仕方ないと諦めているのだが、スターリンク衛星群は少し事情が異なる。
アマチュア天体写真ファンが撮影する写真に大量に写りこんで写真を台無しにしてしまうスターリンク衛星群は天文ファン、しいては人類の敵とも言えるだろう。
しかしそれだけではない、この記事を見てほしい。
この記事はIDAという国際ダークスカイ協会という夜空を守ろうという組織のBlog記事だ。
この記事の中に使われている写真はアメリカのローウェル天文台で撮影された観測写真である。
観測対象の前を横切るたくさんの線はスターリンク衛星群が通過したときに写りこんだものだ。
このようにスターリンク衛星は研究としての天文学にも深刻な被害を与えているのである。
宇宙は誰のものでもないのかもしれないが、一営利企業がこのような暴挙を行っていいはずがない。
また最近ブラックホールの撮像で一躍脚光を浴びている電波天文学者はさらに深刻な事態になるのではないかと懸念している。
電波天文学は光学望遠鏡ではなく巨大なパラボラアンテナを用いて天体からの微弱な電波を受けることにより宇宙を知ろうとする学問領域だ。
その天体からの微弱な電波が全天を覆いつくすスターリンク衛星の影響で観測不能になるかもしれないと考えられている。
スターリンク衛星はどの程度このことを考慮しているのだろう。
例えば同様の衛星通信サービスを展開するグローバルスターに関しては総務省のサイトをみるとこのような資料があった。
グローバルスターは低軌道衛星24機による運用のようだが、とりあえずは電波天文を含む他のシステムとの干渉を検討していたことは分かる。
ところがスターリンク衛星を打ち上げているSpace-X社のトップであるイーロンマスク氏はTwitterで影響はない、望遠鏡は宇宙に打ち上げればいいと言い放っていたが、
途中から衛星の反射を抑えるように開発チームに支持したとか言っていて事前に検討していないことがよく分かる。
最終的には夜空の星よりスターリンク衛星のほうが多く見える星空を世界の誰が望んでいるのだろう。
全天の肉眼で見える星は6000個程度である。
そこに12000個の衛星を打ち上げようとする一営利企業の暴挙を黙ってみていていいのだろうか。
取り返しの付かないことになる前に声をあげることが重要だと思うのだが。
今後もスターリンク衛星、イーロンマスクの動向は注視していこうと思う。
2019/05/31 投稿