天体観測、なんか憧れてしまう響きですよね。
天体観測というと望遠鏡が必要というのが何となく一般的なイメージではないでしょうか。
星を観測するのは天文台、天文台といえばドームの中に鎮座している大きな望遠鏡を思い浮かべてしまいます。
満天の星を見たときにあの星々を望遠鏡で見たらもっといろいろ見えるのだろうなと思うのは当然のことだと思います。
でも自宅に大きなドームを建てて大きな望遠鏡を据え付けなければ星が見えないわけではありません。
なにより大きな望遠鏡はとても高価でそう簡単に購入できるものではありません。
ハワイにあるすばる望遠鏡は400億円程の建設費がかかったそうです。
それは極端な例としても望遠鏡は小さなものから大きなものまで、値段が手ごろなものから高価なものまで千差万別です。
ここでは個人で入手できる手ごろな望遠鏡について考えてみることにします。
まず望遠鏡とは何でしょうか。 望遠鏡というのは遠くのものを拡大して大きく見せるものです。 感覚的には遠くにある小さなものを拡大してあたかも近くにあるように見せるものと言えるでしょう。 そのようなものは他にもありますね。 双眼鏡です。 双眼鏡は両目をで覗くために二つの望遠鏡をひとつに繋いだものともいえます。 ただ双眼鏡は手に持って使うことがほとんどですので多少手振れをしても使えるように倍率が低く設定されています。 望遠鏡はそれに比べて高い倍率で使うことが多いので三脚のついた架台に載せて使うように設計されています。 双眼鏡で星を見ると倍率が低いために広い視野が見えます。 望遠鏡では倍率が高いため拡大率が大きいのですが狭い範囲しか見えません。 ですので双眼鏡では広い視野を生かして広がった対象をみる。 望遠鏡は倍率(拡大率)を生かして小さなものを見るという風に使い分けることが出来ます。 星を見るときは肉眼、双眼鏡、望遠鏡を使い分けて楽しむのがいいのです。 望遠鏡がないと星が見えないかと問われたらNoというのが答えです。 肉眼でも双眼鏡でも星は楽しめます。 でも天体を見るためには望遠鏡も重要な観測装置であることは事実ですし、あこがれであるわけです。 ここではその望遠鏡を最初に手にする人のために望遠鏡について解説していこうと思います。
望遠鏡はどうやって遠くの小さいものを大きく拡大してみることができるのでしょう。 レンズで光を集めて拡大する望遠鏡の構造は人の眼と同じです。 今から400年ほど前にガリレオが望遠鏡で初めて星を見ました。 レンズで光を屈折させて光を集める方式なのでこの形式の望遠鏡を屈折望遠鏡と呼びます。 屈折望遠鏡にもいろいろ種類があって、ガリレオが使用した望遠鏡はガリレオ式屈折望遠鏡と呼ばれています。 ただ人間は光を集めるのはレンズだけとは限らないことに気付きました。 凹面の鏡でも光を集めることができます。 ニュートンは鏡を用いた望遠鏡で星を観測しました。 その望遠鏡は鏡で光を反射して光を集めるので反射望遠鏡と呼ばれます。 また、レンズと鏡を組合わせた望遠鏡のタイプをカタディオプトリックと呼びます。
屈折望遠鏡はレンズで光を集めます。一番前についている一番大きなレンズを対物レンズ、眼で覗くところにある小さなレンズを接眼レンズといいます。
屈折式の望遠鏡はレンズで光を屈折させて集めます。
レンズで光を屈折させると光の波長(色)によって集まる位置が違ってきます。
これはプリズムで光を屈折させることを考えれば分かりますよね。
この性質(色収差といいます)のせいで1枚の対物レンズ(シングルレンズといいます)でできた望遠鏡は星を見ると星の周囲に色が滲んで見えてしまいます。
望遠鏡は2枚以上のレンズを組合わせた対物レンズを使用しているものが大半なのはこの色の滲みを軽減させるためです。
人の眼は赤・緑・青の3色を感じることができます。この3色の比率で色が決まるのです。
望遠鏡の対物レンズは3色中の2色の収差を軽減させるように設計されたものをアクロマート、3色の収差を軽減させるように設計されたものをアポクロマートといいます。
一般にアクロマートは2枚のレンズを組合わせた対物レンズで実現し、3速の収差を軽減させるには3枚のレンズを組合わせた対物レンズが必要です。
最近はEDガラスとかSDガラスと称する高性能なガラスを使用して2枚のレンズでアポクロマートの機能をもたせた対物レンズや4枚以上のレンズを組合わせて色収差以外の収差を軽減させる設計のレンズもあります。
一般にはレンズの枚数が多くなれば価格も高くなりますので自分の観望・観測スタイルに合うものを選択するとよいでしょう。
反射望遠鏡は鏡で光を反射させて光を集めます。
このとき光がガラスの中を通らず鏡の表面で反射されるだけですので原理的に色収差は発生しません。
最初に光を反射させる凹面鏡を主鏡といいます。
屈折望遠鏡の対物レンズに相当するものですね。
また、レンズと違い光を反射させる面がひとつですので鏡を作るコストはレンズを作るコストより安くなります。
ですから反射望遠鏡は屈折望遠鏡よりも安価で大きな主鏡を作ることができるので屈折式と反射式を比べた場合、同じ価格ならば反射式の方が大きな望遠鏡を入手できるでしょう。
ただし反射望遠鏡は光軸という光が通ってくる軸が狂いやすい傾向があったりして扱いが屈折望遠鏡よりも少し難しいことが多いので初めての望遠鏡でしたら屈折式の方が扱いやすいでしょう。
望遠鏡は倍率が高いので望遠鏡を手に持って見ることは不可能です。
架台に載せて揺れないようにして使用します。
望遠鏡を載せる架台は2通りの種類があります。
ひとつは経緯台と呼ばれる架台です。
経緯台は水平方向に回る軸と垂直方向に回る軸の2つの軸があり、望遠鏡を水平、垂直に動かして目的の天体を導入します。
この架台は直感的に動かすことができるので初心者の方や、次から次へと天体を導入する観望会などでの使用に適しています。
もうひとつの架台は赤道儀と呼ばれるものです。
経緯台と同じく2軸の構造ですが、ひとつの軸は地球の自転軸と平行になる赤経軸と呼ばれる軸です。
赤経軸はその延長が北極星に向くことになります。
もうひとつの軸が赤緯軸と呼ばれる軸です。
赤緯軸は赤経軸と垂直に回ります。
赤道儀とは経緯台の水平に回転する軸(この軸は真上を向いています)を北極星の方向に傾けたものをイメージすると分かりやすいかもしれません。
赤道儀は一度目的の天体を導入した後は赤経軸を星の日周運動にあわせて一定の速度で回してあげれば導入した天体を視野の中心においておくことが可能になります。
最近は望遠鏡の架台を駆動するモーターを内蔵したコンピューターで制御する賢い架台が増えてきました。
赤道儀でも経緯台でもこのような架台では自動で天体を導入したり、導入した天体が視野から外れてしまわないように自動で追尾したりしてくれます。
もちろんこのような架台はある程度高額となりますので、どのような架台が自分の使用方法に合っているかを考えて最適な架台を選んでください。
望遠鏡の専門店でないところで粗悪望遠鏡の広告に「倍率150倍」とか書いて隣に土星のきれいな写真を載せているものを見たことがありませんか。
倍率が高ければよく見えるのでしょうか。
望遠鏡の倍率について考えてみましょう。
望遠鏡の倍率は対物レンズ(反射型であれば主鏡)の焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割った値で求められます。
焦点距離というのは平行光線(例えば太陽や星からの光)を対物レンズに入射させたとき、その光が1点に集まるところ(焦点といいます)と対物レンズとの間の距離です。
英語ではfocal lengthというので小文字のfで表すことがあります。
望遠鏡のカタログで f=600mm と書いてあったら焦点距離が600mmの望遠鏡ということです。
接眼レンズはいろいろなものを交換して使いますが、焦点距離は5mm~30mm程度のものが多く使われます。
例えば f=600mm の望遠鏡に 10mm の接眼レンズをつけると倍率は 600÷10=60 で60倍ということになります。
倍率を上げると像が大きく見えますが、大きくなるのは像だけではありません。
レンズの収差も大きく見えることになります。
ですので大雑把に言えば収差の少ない高性能(高価格)な望遠鏡ほど倍率を上げても像が乱れないということになります。
また、対物レンズの口径(大きさ)が大きいほど倍率を上げたときに見やすくなります。
だいたいの目安として、対物レンズの口径をミリメートルで表したときにその半分くらいの倍率から1.5倍くらいの倍率までがよく見える範囲でしょう。
例として標準的な性能の口径60mmの望遠鏡では30倍から90倍くらいの間で使用すると気持ちよく見えます。
また、口径をミリメートルで表したときの2倍の数値を最高倍率と呼ぶ場合もあるようです。口径60mmの望遠鏡の場合120倍が最高倍率ということになります。
最高倍率程度の倍率になると上空の空気の揺らぎなどの条件がかなりよくないと天体をはっきりと見ることが難しくなってきます。
このことから30~50mm程度の口径の望遠鏡のチラシに150倍とか200倍などの文字が躍る場合は「よく見えない玩具レベルの望遠鏡」であると考えて差し支えないと思います。
経験上60mm程度の望遠鏡でも空の条件がよければ200倍以上の倍率をかけて土星をきれいに見ることは可能です。
ただ、そのくらいの倍率に耐えうる望遠鏡はホームセンター等で売られている望遠鏡より2桁ほど高価なものである場合がほとんどです。
安い望遠鏡が悪いと言っているのではなく、望遠鏡の性能によって見ることが出来る対象が異なってきますので適した望遠鏡を使用しましょうということです。
望遠鏡の明るさといってもピンとこないかもしれません。
望遠鏡の明るさは口径比というもので表します。
焦点距離が f=400mm 、対物レンズの口径が D=40mm の望遠鏡を例にとります。
口径比は 焦点距離÷口径 で表すことができますので、この場合は 400÷40=10 となり口径比は F=10 となります。
ここでFというのは通常F値(えふち)と呼ぶ口径比を表わしています。
F値が大きいほど暗い、F値が小さいほど明るい望遠鏡です。
F値が大きい暗い望遠鏡はコントラストが高く見える傾向があり、倍率を高くするのも容易なので月や惑星を見るのに適しています。
F値が小さい明るい望遠鏡は低い倍率で広い視野を見るのに適していますので広がった星雲や星団などを見るのに適しています。
一般にF値の小さな明るい望遠鏡はコンパクトになりますので扱いやすいのですが、明るくなればなるほど色収差などの収差を補正したレンズを作成するのが大変になりますので望遠鏡の価格は高価になる傾向があります。
一般に明るさというと昼は明るい、夜は暗いという感覚の延長上で考えがちですが、望遠鏡の明るさ(F値)というのは望遠鏡の視野内の星と背景のコントラストの差だと考えると分かりやすいかもしれません。
星はとても遠くにあるので倍率をいくら高くしても点にしか見えません。
そしてどのくらいくらい星まで見えるのかというのは望遠鏡の口径で決まります。
ですからF値の明るい望遠鏡と暗い望遠鏡では、口径が同じならばどれだけ暗い星が見えるかというのは変わりません。
明るいF値の望遠鏡は鏡筒(筒の長さ)が短いので扱いやすいというメリットはあります。
逆に暗いF値の望遠鏡はレンズの収差補正が容易なので同じ口径、同じ性能の望遠鏡ならばF値が暗い望遠鏡の方が安価であるというメリットがあります。
F値の違いは天体写真を撮るときにはかなり効いてきますが、眼視で楽しむ分にはあまりこだわらなくてもいいと思います。
集光力というのは文字通り光を集める能力のことです。
望遠鏡でいうと口径が大きければ大きいほど集光力が高いということになります。
人の眼を考えて見ましょう。
人の眼は水晶体というレンズで光を集めて網膜という光を感じる細胞が集まっているところに像を結びます。
レンズ(水晶体)の前には瞳孔という明るさによって大きさが変わる絞りがついていて、暗いところでは直径7mm程度に広がります。
ですので人の眼は口径7mmの望遠鏡と同じ集光力があるわけです。
口径40mmの望遠鏡のレンズの面積を求めてみましょう。
円の面積は 半径×半径×3.14 ですから
20×20×3.14=1256 [mm^2]
となります。
人の眼の瞳孔の面積は
3.5×3.5×3.14=38.465 [mm^2]
となり、口径40mmの望遠鏡は人の眼の33倍程度の集光力があるわけです。